<公式>映画『イミテーション・ゲーム / エニグマと天才数学者の秘密』オフィシャルサイト|大ヒット上映中
introduction

「彼の時代が必ず来る」──2010年、TVシリーズ「SHERLOCK(シャーロック)」で大ブレイクを果たしたベネディクト・カンバーバッチ。その人気が英国から世界へと熱波のごとく広がるに従って、多くのメディアがそう予言した。
そして傑作『裏切りのサーカス』、ハリウッド超大作『スター・トレックイントゥ・ダークネス』などの快進撃を経て、遂にその時がやって来た。最新主演映画でキャリア最高の評価を受け、本年度アカデミー賞で初の主演男優賞ノミネートという快挙を成し遂げたのだ。
カンバーバッチがめぐり会った、シャーロック・ホームズに匹敵する天才の役は、実在の数学者アラン・チューリング。
第二次世界大戦時に、解読不可能と絶望視されていたドイツ軍の暗号エニグマに、恐るべき回転速度を誇る頭脳で挑んだ男だ。戦争終結とコンピューター発明に貢献した人物でありながら、その生涯は重大機密として英国政府に隠され続けてきた。
今、50年以上の時を経て、謎に満ちた男の驚愕と感動の真実が明かされる──!

1939年、英国。世界一の数学者を自負するアラン・チューリングは、ドイツ軍の暗号エニグマを解読するという政府の極秘任務に就く。チェスの英国チャンピオンなど各分野の精鋭によるチームが結成されるが、自信家で不器用なチューリングは彼らとの協力を拒み、一人で電子操作の解読マシンを作り始める。そんな中、新たにチームに加わったクロスワードパズルの天才ジョーンがチューリングの理解者となり、仲間との絆が生まれ始める。暗号解読をゲームと捉えていたチューリングだが、やがてその目的は人の命を救うことに変わっていく。いつしか一丸となったチームは予想もしなかったきっかけでエニグマを解くが、解読したことを敵に知られれば設定は変えられてしまう。MI6と手を組んで、チューリングはさらに危険な秘密の作戦に身を投じるのだが──。

チューリングと心を通わせるジョーンには本作で本年度アカデミー賞助演女優賞にノミネートされたキーラ・ナイトレイ。その他、『イノセント・ガーデン』のマシュー・グード、『裏切りのサーカス』のマーク・ストロングらが出演。監督はノルウェーの新鋭モルテン・ティルドゥム。
果たして、エニグマ解読までと解読後の二つの極秘作戦の全貌とは、そして孤独な天才を支え続けた、心が震えるほど切ない秘密とは──?

story
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1939年、イギリスがヒトラー率いるドイツに宣戦布告し、第二次世界大戦が開幕。
天才数学者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)は、英国政府の機密作戦に参加し、ドイツ軍の誇る暗号エニグマ解読に挑むことになる。エニグマが“世界最強”と言われる理由は、その組み合わせの数にあった。暗号のパターン数は、10人の人間が1日24時間働き続けても、全組合せを調べ終わるまでに2000万年かかるというのだ――!

暗号解読のために集められたのは、チェスの英国チャンピオンや言語学者など6人の天才たち。MI6のもと、チームは暗号文を分析するが、チューリングは一人勝手に奇妙なマシンを作り始める。子供の頃からずっと周囲から孤立してきたチューリングは、共同作業など、はなからするつもりもない。
両者の溝が深まっていく中、チューリングを救ったのは、クロスワードパズルの天才ジョーン(キーラ・ナイトレイ)だった。彼女はチューリングの純粋さを守りながら、固く閉ざされた心の扉を開いていく。そして初めて仲間と心が通い合ったチューリングは、遂にエニグマを解読する。

しかし、本当の戦いはここからだった。解読した暗号を利用した極秘作戦が計画されるが、それはチューリングの人生はもちろん、仲間との絆さえも危険にさらすものだったのだ。さらに自分に向けられるスパイ疑惑。そしてチューリングが心の奥に隠し続け、ジョーンにすら明かせなかった、もう一つの大きな悲しい秘密。
あらゆる秘密と疑惑が幾重にも積み重なり、チューリングの人生は思わぬ方向へと突き進んでいくが――。
cast
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1976年7月19日、英ロンドン生まれ。
マンチェスター大学、ロンドン音楽演劇アカデミーで演劇を学び、その後多くのTVドラマに出演。ホーキング博士を演じたBBC製作の「ベネテクト・カンバーバッチ ホーキング」(04)で注目され、世界的な脚光を浴びたBBCドラマ「SHERLOCK(シャーロック)」シリーズ(10/12/14)のホームズ役で、英国アカデミー賞など多くの主演男優賞にノミネートされた。
映画では、ゴールデン・グローブ賞作品賞受賞のジョー・ライト監督『つぐない』(07)、スティーヴン・スピルバーグ監督『戦火の馬』(11)、ゲイリー・オールドマン主演『裏切りのサーカス』(11)、J・J・エイブラムス監督『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(13)、アカデミー賞作品賞に輝いた『それでも夜は明ける』(13)等話題作に多く出演。
また、舞台でも活躍。11年には、ダニー・ボイル演出「フランケンシュタイン」の主演で、ローレンス・オリヴィエ賞ほかを受賞した。
待機作として、クリスチャン・ベイル共演『Jungle Book: Origins』、ゲイリー・オールドマン監督『Flying Horse』、マーベル・スタジオの新作『Doctor Strange』ストレンジ役などがある。
本作で、初のアカデミー賞にノミネートされている。
1985年3月26日、英ミドルセックス州生まれ。
6歳でTV映画デビューを果たし、10歳の時に『イノセント・ライズ』(94)で長編映画デビュー。その後、ジョージ・ルーカス監督『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(99)などに出演した後、02年の『ベッカムに恋して』でロンドン映画批評家協会賞新人賞を獲得。続く『ラブ・アクチュアリー』(03)や『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ(03/06/07)などで、世界中にその名を知られることとなる。
その他主な出演作として、アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞の主演女優賞にノミネートされたジョー・ライト監督『プライドと偏見』(05)、ゴールデン・グローブ賞主演女優賞にノミネートされた『つぐない』(07)、デヴィッド・クローネンバーグ監督『危険なメソッド』(11)、ジュード・ロウ共演『アンナ・カレーニナ』(12)などがあり、今後の待機作には、ケネス・ブラナー監督『エージェント:ライアン』(14)などがある。
本作の演技で、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされており、『プライドと偏見』(05)以来2度目のノミネートとなる。
1978年4月3日、英デヴォン州生まれ。
ブリギンガム大学で演劇を、ロンドンのウェーバー・ダグラス演劇アカデミーで古典演劇と舞台演技を学び、03年にフェルナンド・コロモ監督のカルト伝記映画『South from Granada』で映画デビュー。
主な出演作として、ウディ・アレン監督『マッチポイント』(05)、ジョセフ・ゴードン=レヴィットと共演した『ルックアウト/見張り』(07)、ザック・スナイダー監督『ウォッチメン』(09)、コリン・ファースと共演を果たしたトム・フォード監督『シングルマン』(09)、ニコール・キッドマン、ミア・ワシコウスカと共演したパク・チャヌク監督『イノセント・ガーデン』(13)などがあり、今後の待機作にはターセム・シン監督『Selfless』などがある。
1963年8月30日、英ロンドン生まれ。
ロンドン大学などで演劇、演技を学び、『リボルバー』(05)、『ロックンローラ』(08)、『シャーロック・ホームズ』(09)などのガイ・リッチ-監督作や、『ワールド・オブ・ライズ』(08)や『ロビン・フッド』(10)などのリドリー・スコット監督作、『スターダスト』(07)や『キック・アス』(10)などのマシュー・ヴォーン監督作に出演。
その他主な出演作として、ロマン・ポランスキー監督『オリバー・ツイスト』(05)、ジョージ・クルーニー主演『シリアナ』(05)、ダニー・ボイル監督『サンシャイン2057』(07)、ゲイリー・オールドマン主演『裏切りのサーカス』(11)、キャスリン・ビグロー監督『ゼロ・ダーク・サーティ』(12)などがある。
1946年10月10日、英プリマス生まれ。
舞台俳優として活躍した後、『007/ユア・アイズ・オンリー』(81)で本格的に映画デビュー。主な代表作に、メリル・ストリープ共演『プレンティ』(85)、デヴィッド・フィンチャー監督『エイリアン3』(92)、フランソワ・オゾン監督『スイミング・プール』(03)、ウディ・アレン監督『タロットカード殺人事件』(06)などがある。また04年の『ラヴェンダーの咲く庭で』では監督・脚本デビューを果たし、同作でジュディ・デンチとマギー・スミスはヨーロッパ映画賞にノミネートされた。
今後の待機作として、ヘレン・ミレンら共演の『Woman in Gold』、トム・ハーディ、ゲイリー・オールドマン共演の『Child 44』、ベストセラー小説の映画化『Pride and Prejudice and Zombies』などがある。
1981年5月18日、アイルランド・ダブリン生まれ。
ダブリン大学で演技を学び、BAFTA、エミー賞、ゴールデングローブ賞に輝くTVシリーズ「ダウントン・アビー」のトム・ブランソン役でその名を知られている。映画の代表作としては、アイルランドアカデミー賞10部門でノミネートされたパディ・ブレスナック監督『Man About Dog』(04)での主演の他、マギー・スミスと共演した『From Time To Time』(09)、ニック・ラヴ監督『ロンドン・ヒート』(12)、エウヘニオ・ミラ監督『グランドピアノ 狙われた黒鍵』(13)、ジェレミー・ラヴァリング監督によるサイコホラー『In Fear』(13)などがあり、今後の待機作にはジョナサン・モストウ監督『Hunter’s Prayer』がある。
1989年3月25日、英シェフィールド生まれ。
子役としてキャリアをスタートさせ、ヨーク大学で英文学を専攻し最優等学位を得て卒業。
アナンド・タッカー監督『And When Did You Last See Your Father?』(07)の演技で英国インディペンデント映画賞新人賞や、カイロ国際映画祭主演男優賞にノミネートされた。続いて、ロネ・シェルフィグ監督の『17歳の肖像』(09)と『ワン・デイ 23年のラブストーリー』(11)、中田秀夫監督『Chatroom/チャットルーム』(10)、マイケル・ウィンターボトム監督『ミスター・スキャンダル』(13)に出演している。
また彼は、バーバリーデザイナー、クリストファー・ベイリーに抜擢され、バーバリーの世界的な広告のイメージキャラクターを務めている。
1978年2月17日、英ロンドン生まれ。
オックスフォード大学で英文学を専攻し、ロンドンの演劇学校LAMDAでトレーニングを積む。舞台を中心に活躍しており、シェイクスピアの「尺には尺を」、「ハムレット」で11年イブニング・スタンダード賞最優秀俳優賞を受賞、ローレンス・オリヴィエ賞にもノミネートされた。
映画の代表作には、ビル・タナー役を務めた『007/慰めの報酬』(08)、『007 スカイフォール』(12)の他、英国インディペンデント映画賞で助演男優賞を受賞した『ブロークン』(12)、ニック・フロスト主演のダンスコメディ『カムバック!』(14)などがある。
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1967年生まれ。ノルウェイ生まれ。
03年、アマンダ賞作品賞をはじめ、ノルウェー国際映画祭、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭、ワルシャワ国際映画祭で観客賞に輝いたコメディ映画『Buddy』(03)で監督としてのキャリアをスタート。08年には、TV映画「私立探偵ヴァルグ2 第2話「堕天使」」でアマンダ賞監督賞にノミネートされ、11年の『ヘッドハンター』ではノルウェー映画史上最大のヒットを記録、12年には英国で公開された外国語映画の最高収益を叩き出した。また同作は興行的大ヒットに加えて、BAFTA外国語映画賞にノミネートされ、エンパイア賞スリラー賞とスチュアート賞ベスト・インターナショナル・フィルムに輝いた。今後の待機作としては、ワーナー・ブラザーズ製作の『Ghostman』、ユニバーサル製作の『The Disciple Program』などが進展中。
本作で、アカデミー賞監督賞にノミネートされている。

米シカゴ生まれ。
03年にコロンビア大学で宗教史を専攻し文学士号を取得。ニューヨーク・タイムズのベストセラーであり、アーサー・コナン・ドイルの生涯を描いたミステリー小説「The Sherlockian」の作者。『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』は、12年のブラックリスト(ハリウッド未製作脚本人気投票)の1位に輝き、ブラックリスト史上、最高得点を獲得している。今後の待機作には、マイケル・マン監督やマーク・フォースター監督によるテレビ作品の他、レオナルド・ディカプリオ主演予定のベストセラー小説「The Devil In The White City」の映画化などがある。
本作で、アカデミー賞脚色賞を受賞している。

99年よりスペイン映画界で撮影を手掛け、アレハンドロ・アメナバール、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥなどの監督と仕事をしている。
撮影を手掛けた主な作品にはクリスチャン・ベイル主演の『マシニスト』(04)、ヨーロッパ映画賞撮影賞にノミネートされた『永遠のこどもたち』(07)、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作『BIUTIFUL ビューティフル』(10)、ユアン・マクレガーとナオミ・ワッツ主演の『インポッシブル』(12)、マーク・ストロング主演の『記憶探偵と鍵のかかった少女』(13)などがある。

1959年11月2日生まれ。
アカデミー賞作品賞を受賞したベン・アフレック監督作『アルゴ』(12)で、アカデミー賞編集賞の他、BAFTAやアメリカン・シネマ・エディターズのエディ賞を受賞。同年、キャスリン・ビグロー監督作『ゼロ・ダーク・サーティ』(12)でも同賞にノミネートされ、ロサンゼルス映画批評家協会賞の編集賞を受賞。それ以前にも、マイケル・マン監督作『インサイダー』(99)やゲイリー・ロス監督作『シービスケット』(03)の編集でアカデミー賞とエディ賞にノミネートされている。
主な代表作には、マイケル・マン監督の『ヒート』(95)や『マイアミ・バイス』(06)、ジョン・タートルトーブ監督の『ナショナル・トレジャー』シリーズ(04/07)、マイケル・ベイ監督作『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』(11)などがある。 本作で、アカデミー賞編集賞にノミネートされている。

オックスフォード在学中にシアター・デザインの奨学金を獲得。その後、演劇・オペラ・バレエの舞台セットデザインを皮切りに、セットデザイナーとしてのキャリアをスタートさせる。
トーマス・アルフレッドソン監督『裏切りのサーカス』で、英国インディペンデント映画賞やヨーロッパ映画賞の美術賞を受賞。BAFTAやアート・ディレクターズ・ギルドの美術賞にもノミネートされ、同ギルドにはスティーヴン・ダルドリー監督作『リトル・ダンサー』(00)、『めぐりあう時間たち』(02)でもノミネートされた。
その他の代表作には、ウディ・アレン監督『タロットカード殺人事件』(06)や『ウディ・アレンの夢と犯罪』(07)、メリル・ストリープ主演『マンマ・ミーア!』(08)等がある。
本作で、アカデミー賞美術賞にノミネートされている。

英マンチェスター生まれ。
ウィンブルドン・スクール・オブ・アートを卒業し、リドリー・スコット監督『グラディエーター』(00)などでアシスタントを務めた後、『ブラックホーク・ダウン』(01)で衣装デザインを担当する。アル・パチーノやジェレミー・アイアンズ出演の『ヴェニスの商人』(04)でBAFTAにノミネート。また『Vフォー・ヴェンデッタ』(05)と『キック・アス』(10)では衣装デザイナーズ・ギルドのファンタジー・フィルム賞にノミネートされた。
その他の主な代表作には、マーティン・フリーマン主演『銀河ヒッチハイク・ガイド』(05)、キウェテル・イジョフォー出演『キンキーブーツ』(05)、マシュー・ヴォーン監督『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(11)などがある。

1961年8月23日生まれ。仏パリ生まれ。
80年代にフランス映画界に入り、抒情性豊かで優雅な曲作りで、すぐにその地位を不動のものとする。スティーヴン・フリアーズ監督『クィーン』(06)と『あなたを抱きしめる日まで』(13)、デヴィッド・フィンチャー監督『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(08)、ウェス・アンダーソン監督『ファンタスティック Mr. FOX』(09)、トム・フーパー監督『英国王のスピーチ』(10)、ベン・アフレック監督『アルゴ』(12)にて、アカデミー賞ノミネート経験を持つ、世界屈指の映画音楽作曲家の一人である。
また、本作とウェス・アンダーソン監督『グランド・ブダペスト・ホテル』(13)の両作で、本年度アカデミー賞作曲賞にノミネートされており、これで8度目のオスカーノミネートとなる。
production note
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2009年、プロデューサーのノラ・グロスマンとイド・オストロフスキーは、“英国のブラウン首相が政府を代表し、一人の男に謝罪した”というニュース記事に目を留めた。一国の首相が公式に謝るなんて尋常ではない。それは、“第二次世界大戦後のアラン・チューリングの扱いに対するお詫び”だった。興味を引かれた二人は、アンドルー・ホッジスの書いたチューリングの伝記を読み、世にほとんど知られていない数学者の数奇な人生に驚く。
映画化に向けて動き始めた二人は、チューリングを「スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツからも崇拝されるコンピューターの初期の発明者」だと敬愛していた若き小説家グレアム・ムーアと意気投合し、彼が脚色を手掛けることになる。ムーアは、「何よりもこれが実話だということがショッキングだった」と語る。
脚色にあたって、チューリングの論文の題名「イミテーション・ゲーム」が、ムーアの着想の手助けとなった。そこには、機械と人間を区別するためにチューリングが発明した手法が詳細に記されている。「イミテーション・ゲーム」とは、“イミテーション=現実の人間を技術で再現すること”で、それはチューリングにとって“ゲーム”だったのだ。
2011年、完成したムーアの脚本の評判は瞬く間に広まり、ハリウッドの大物たちから好評を受けながら、まだ製作されていない脚本ランキング“ブラックリスト”の第1位に選ばれた。プロデューサーのテディ・シュウォーツマンは、「実に面白かった。歴史的に重要な事実がたっぷり盛り込まれ、魅惑的だが正当に理解されていない人物が主人公だ。映画の場面が目に浮かぶ脚本で、セリフは高度に様式化されていた」と語る。そして彼は、「これは世界が知るべき物語だ」と確信し、製作に乗り出した。

伝記とミステリーが融合した素晴らしい脚本を映像化するために、かつてない映画を生み出せる才能が求められた。オストロフスキーは、英国アカデミー賞にノミネートされた『ヘッドハンター』の力量を買って、ノルウェー人のモルテン・ティルドゥムを監督に抜擢した。
ティルドゥムは、チューリングが因習を打破しようとする、その情熱のルーツを事実に忠実に描くことが不可欠だと感じていた。「チューリングは、ひどく不当な扱いを受けたが、自分の理想を曲げようとはしなかった。彼の勇気ある行動のおかげで、世の中はそれ以前よりはマシになった。これは、他人とは異なる個性への敬意と、規範に従わず異なった考え方をする人たちを受け入れることが、いかに大切であるかを伝えるきわめて重要な物語だ。」
イギリス人ではないティルドゥムは、自身の“部外者”としての視点を生かしてチューリングの立場を捉え、物語をより普遍的なものにしようとした。当時は間違いなく英国史上でも特別な時代だったが、チューリングの考えはそんな時代をも超越していた。「だから、この映画も単なる時代劇ドラマではなく、もっと大きくてずっと意義深いものなんだ」とティルドゥムは胸を張る。

天才的な頭脳と複雑な人間性を持つチューリング役について、ティルドゥムはこう語る。「僕は自分がこの映画を手掛けることになる前から、チューリング役を演じられるのはベネディクト・カンバーバッチしかいないと思っていた。ベネディクトは豊かな感受性と強さを併せ持っている。天才に扮し、説得力を持って演じられる俳優はそうそういない。ベネディクトなら、チューリングになり切り、観る側を心から納得させられる。」
ムーアはチューリング役にふさわしい俳優を見つけて興奮したと振り返る。「チューリングは天才だが引きこもりでもあり、第二次世界大戦の勝利という困難なミッションを任される。ベネディクトはチューリングの頭脳明晰な面を表現するだけでなく、まさに彼の存在そのものを体現していた」 オストロフスキーもまた、「ベネディクトは、チューリングかいかに頭が切れ、好奇心が強く、謎めいて不可解な人物かを、観る側にちゃんと伝えている」と絶賛する。

次の問題は、ジョーン・クラーク役を演じる女優探しだった。彼女は公私ともにチューリングの論争相手であり、生まれながらの聡明な数学者だ。ジョーンは時代を先取りした女性で、多才な人物であるため、この役を演じるには熟練の演技力が要求される。ここでアカデミー賞にノミネートされたキーラ・ナイトレイが、自らクラーク役を演じたいと名乗り出た。「彼女はこの役に強烈なパワーだけでなく傷つきやすい面ももたらした」とティルドゥムは振り返る。
さらに彼は、イギリスの実力派俳優が揃ったと語る。「マーク・ストロングが登場するシーンでは、彼から目をそらすことができない。チャールズ・ダンスは彼の役柄に重厚感を与えている。この人物は生まれながらの軍部のリーダーだからね。そして、チェスの英国チャンピオンであり、人を引き付ける魅力を備え、非常にハンサムで秀でた人物だった暗号解読者ヒュー・アレグザンダーをマシュー・グードが演じてくれた。彼らと仕事ができて、とてもラッキーだよ。彼らの演技はいくら褒めても褒めたりないくらいだ。」

最高にダイナミックな映像を望んだティルドゥムは、一流の製作チームを招集した。撮影監督のオスカル・ファウラには、時代背景を尊重し、悲劇的な上品さを再現することを求めた。
プロダクション・デザインを担当したマリア・ジャーコヴィクは、デザインという意味でこの映画の中心となるのは、チューリングの発明した暗号解読機“bombe”であると気付く。そして、ブレッチリー・パークに行って、実際にその解読機が動作するのを見学する。ガタガタ音を立てて動く見事な機械から無数の赤いケーブルが伸びている様子を観察したジャーコヴィクは、ダイアルをぐるりと取り付けたbombeを忠実に再現した。彼女は、「この機械は映画の中心であるだけでなく、私たちの歴史の中心でもあるの。スクリーン上でこの機械の内部や仕掛けが見られるのよ!」と語る。 衣装デザインを担当したサミー・シェルドン・ディファーは、出来る限り当時の衣類を使うために、CC41【民間衣類1941年】のラベルが付いた、配給制度で配られた衣類を探し出した。

チューリングの物語は、スタッフとキャストの心に深く残った。この天才の半生を生きたカンバーバッチは、「僕は初めて自分をコントロールできなくなり、演技中に号泣してしまった。大きな歴史の波にのみ込まれ、不当な扱いを受けながらも、自分の信念を貫き通した彼の人生を、一人でも多くの人に伝えるのが、自分の使命だと思ったよ」と感慨深く語っている。
ムーアは関係者全員の気持ちをこうまとめる。「僕たちはチューリングの功績だけでなく、彼自身と彼の人生を称える映画にしたかった。この映画を観た人たちに難解で複雑な人物を身近に感じてもらえればと思う。僕の目標は、観客にチューリングに対して親しみを抱いてもらい、彼の考えていたことや経験したことに触れてもらうことだった。そして、チューリングがどんなに偉大な人物だったかも理解してもらいたい。」